手術前に「注意が必要な薬」とは…  現役医師がその具体例を紹介

薬とは、病気を治したり、症状をやわらげるものだ。

しかし、手術の際に薬の効果が逆に不都合に働く場合は、細かな薬の調整が必要となる。

今回は、手術前に注意が必要な薬について解説する。

血液をサラサラにする薬

血の塊である血栓による病気を予防する場合に、血液を固まりにくくする薬が使われる。

また、コレステロールを下げる薬の中にも、同じ作用を持つ薬がある。

このような薬の内服中は、出血しやすい状態になる。

手術の合併症のひとつに、出血がある。

そのため手術の前は、サラサラにする薬の内服をやめたり、薬の変更などの検討が必要だ。

血栓ができやすい薬

骨粗鬆症の一部の薬や、女性ホルモンの薬は、手術後に血栓を作るリスクを高くする。

女性ホルモンの薬の中には、経口避妊薬として使用される低用量ピルも含まれる。

低容量ピルは、特に最近飲んでいる女性が増えている印象があり、注意して欲しい。

血栓が血管を詰まらせて、血液の流れがとどこおると、さまざまな障害を引き起こしてしまうのだ。

そのため、手術の際は、飲むのをやめるように言われることが多い。

血糖値を下げる薬

手術前の血糖コントロールは、非常に重要だ。

血糖値が高い状態で手術を行うと、傷がうみやすく、傷もひっつきにくくなる。

また、心筋梗塞などのさまざまな合併症を引き起こすリスクもある。

薬の種類によっては、服用の中止や、変更などの検討が必要だ。

血圧の薬

麻酔薬を使う手術中は、麻酔薬の影響で血圧が変動しやすい。

そのため、手術前も普段通り内服する。

しかし、一部の薬は手術中に血圧が下がりやすくなるため、内服しないこともあり注意が必要だ。

ステロイド

ステロイドは、炎症やアレルギーを抑える薬。

具体的には、関節リウマチ、気管支喘息など、様々な病気の治療に使われる。

手術の前も、症状を安定させるために基本的に継続して内服する。

普段、体からもステロイドが分泌され、血圧や血糖値を調整している。

手術の時には、これらの調整が上手くいかないこともあるのだ。

そのため、内服している量によっては、細かな調整が必要となる。

健康食品・サプリメントにも注意

市販されている薬や、健康食品、サプリメントにも気をつけたい。

血圧や血糖値、麻酔薬の効果に影響を与える成分や、出血しやすくなる成分が含まれるものがあるため、注意が必要だ。

健康食品やサプリメントは、手術に与える影響が分からないものも多いため、中止を検討する。

今飲んでいる薬を必ず伝えよう

正しい薬の調整が行われないと、様々なリスクが発生する。

そのため、手術できない場合もある。

お薬手帳や薬の説明書などを持参して、服用中の薬を必ず伝えるようにしよう。

執筆者:あやたい

医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。

日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。

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