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年間150万トン「もみ殻」は宝の山になるのか 農家を悩ます“厄介者”を資源に変える挑戦

もみ殻の処理が農家の負担となるなか、この未利用資源を新たな素材へ転換する取り組みが各地で進められている。福島県南相馬市のトレ食株式会社も、その一社だ。同社が進める「こめぐり」プロジェクトの仕組みと、農業残渣を資源として循環させるうえでの課題について聞いた。

年間150万トン規模のもみ殻をどう活用するか。「こめぐり」の構造とは

国内では年間約150万トンのもみ殻が発生するとされる。燃料や堆肥などに利用される例もある一方、地域や農家によっては処理に費用や手間がかかることも課題となっている。

トレ食は、こうしたもみ殻を有償で買い取り、成分抽出技術によって「セルロース」素材へ加工する「こめぐり」プロジェクトを進めている。米の生産過程で生じる残渣を回収し、素材や製品として再利用することで、地域内で資源を循環させる仕組みを目指しているという。同社によれば、農家側ではもみ殻の処理負担を軽減できる可能性があり、回収した素材はバイオマス樹脂や紙製品などへの活用を想定している。大手米卸会社や農業協同組合とも協定を締結し、原料の集荷体制を広げている。

一方、もみ殻は重量に対してかさが大きく、広域から集めれば物流コストも増える。地域内でどこまで効率的に回収・加工できるかは、事業として継続するうえで重要な論点となる。

放置竹林やトマトの茎も原料に。季節ごとの農業残渣を活用

同社では、もみ殻だけでなく、竹や農作物の茎・葉など、さまざまな植物由来の残渣も原料として検討している。

もみ殻の発生量が少なくなる夏季には、地域で増加する放置竹林の竹や、ハウス栽培で生じるトマトの茎や葉などを回収。高速分解処理装置を用いてセルロースを抽出し、樹脂などへの利用を進めているという。また、抽出した素材については、プラスチックの使用量を抑えたカトラリーなどへの応用も試みている。

季節ごとに発生する異なる植物資源を活用することで、年間を通じた設備稼働につなげる狙いがある。一方で、植物によって成分や水分量が異なるため、素材の品質を安定させながらコストを抑えて量産するには、原料ごとの調整が必要となる。

素材製造に加え、受託研究や自治体との取り組みも

抽出した粉体セルロースの製造・販売に加え、企業や研究機関からの受託研究、自治体などと連携した地域循環事業にも取り組んでいる。

具体的には、それぞれの地域で発生する未利用資源について、どのような成分を抽出できるのかを検証し、素材化や製品化の可能性を探るケースもあるという。農業残渣の活用は、単に素材を製造すれば成立するものではない。原料を継続的に確保する仕組みに加え、加工コストや物流、さらに完成した素材の利用先まで含めた設計が求められる。

特にバイオマス素材は、石油由来の素材と比較して価格面で不利になるケースもある。環境負荷の低減という側面だけでなく、実際の製造コストや性能面でどこまで既存素材に近づけられるかが、普及を左右することになりそうだ。

残渣をどこまで使い切れるか。循環モデルの次の課題

同社は今後、セルロース抽出後の液体に含まれるシリカ(ケイ酸)を農地へ還元する取り組みや、セルロースナノファイバー、バイオエタノール原料への応用も視野に入れている。農業廃棄物を余すことなく使い切る社会の実現を掲げ、フードテックと地方の資源を結びつける試みを継続する方針だ。

こうした未利用資源の循環事業が一時的な環境施策に終わらず、独立した産業として定着するかどうかは、今後の素材強度の向上や供給体制の安定化、そして市場における価格競争力の確保次第で輪郭が見えてくることになりそうだ。

【取材協力】
トレ食株式会社
代表取締役 沖村 智
https://syokulabo.jp/

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