“男性も注意”貧血は女性に限った病気ではない!産業保健師が解説”放置が危険”な4つの種類と効果的な予防法
貧血という言葉を聞くと、「女性特有の病気」や「症状がなければ問題ない」と考える方も多いかもしれません。しかし、貧血は女性だけでなく男性にも起こり得る病気であり、場合によっては見過ごせない重大な疾患が潜んでいる可能性もあります。今回は、貧血の種類や症状、そして日常生活での予防方法について、株式会社エムステージの産業保健師である本田氏に解説していただきました。
貧血とは
貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク質)の濃度が低くなった状態を指します。体内の鉄分が不足すると、ヘモグロビンも減り、酸素を運ぶ力が弱まってしまいます。その結果、疲れやすくなったり、頭痛や息切れ、さらには運動能力の低下などを招くことになります。
貧血の原因と種類
①鉄欠乏性貧血
貧血でもっとも多いものは、鉄欠乏性貧血です。原因として、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足や、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸からの鉄吸収阻害などが考えられます。また、男性や、閉経後の女性の鉄欠乏性貧血の原因としてもっとも多いものは、消化管出血です。「便が黒い、便が赤い」などの症状がありましたら消化器内科に相談してください。
② 栄養欠乏による貧血
胃切除後、萎縮性胃炎などに伴うビタミン欠乏、アルコール多飲、栄養不良に伴う葉酸欠乏、さらに稀な原因として銅欠乏が貧血を起こすことがあります。亜鉛欠乏による貧血もしばしば見られますが、亜鉛欠乏が単独で起こることは非常に稀です。
③ 慢性疾患による貧血
貧血全体の3分の1程度が「慢性疾患に伴う貧血」に分類されます。慢性腎臓病、関節リウマチ、甲状腺疾患などが原因で貧血を起こします。
④ 血液の病気
これらの原因以外で、再生不良性貧血(血液を作る工場である骨髄の機能の低下による貧血)、骨髄異形成症候群(血液を作る工場である骨髄で正常な血球が作れなくなる貧血)、白血病(腫瘍化した異常な白血球が大量に増殖し正常な血液が作れなくなる貧血)、多発性骨髄腫(骨髄で免疫細胞の一種である形質細胞が腫瘍性に異常増加し正常の血液産生を妨げて起こる貧血)など血液疾患による貧血があります。
貧血の予防
貧血の原因で最も多い「鉄欠乏性貧血」の予防についてご説明します。鉄欠乏性貧血の予防のためには、食事からしっかりと鉄など必要な栄養素をとることが大切です。そのため、動物性食品・植物性食品をバランス良く食べることがポイントです。
鉄の1日の摂取推奨量
日本人の18~64歳が1日の食事から鉄を摂取する量は、「男性:7.5mg、女性:月経のない女性6.5mg、月経のある女性:10.5~11.0mg)」が推奨されています。
貧血を予防するためには
まず、毎日失われる鉄を食事からしっかりとることが必要になります。主な食品に含まれる鉄量は【以下図1】を参考にしてください。
【図1 主な食品の目安量に含まれる鉄量】
引用元:厚生労働省eヘルスネット荒井 裕介氏執筆(2020年10月1日更新)
鉄の他にも、ヘモグロビンなどの材料になる「たんぱく質」、鉄の吸収を高める「ビタミンC」の摂取も大切です。(食品例:鉄もたんぱく質も含む牛肉やレバー、カツオなどの赤身の魚、あさりなど。ビタミンCが多い緑黄色野菜・果物など。)
赤血球が作られるときには「葉酸(ビタミンの1種)」や「ビタミンB12」などが必要です。(食品例:葉酸の多いレバーやほうれん草、アスパラガス、ブロッコリー、納豆など。ビタミンB12の多いレバー、魚介類、チーズなど。)
このほか、食生活での摂取が難しい場合には、ミネラルやビタミンの含有量を強化した食品(鉄であれば牛乳・乳製品、飲料など)も販売されていますので、表示をよく見てご利用を検討するのも一つです。
鉄は胃酸が分泌されると吸収されやすくなるので「柑橘類」や「酢」などの酸っぱいものを食べたり、よく噛んで食べたりして胃酸の分泌を促すと、鉄の吸収率が高まることが期待できます。
最近では、貧血の症状を自覚して病院に行くよりも、健康診断の血液検査で指摘されて受診し、貧血が見つかるケースが増えています。健康診断の結果を確認し、疲れやすさや頭痛、息切れなどの症状がなくても、毎日の食事で動物性・植物性食品をバランスよく摂ることが大切です。
「無理なダイエットをしていないか」、「朝食を抜いていないか」など食生活全般を振り返っていただき、特に思い当たることがない場合は、速やかに医療機関で診察・検査を受けるようにしましょう。
解説/取材協力
本田和樹
株式会社エムステージ産業保健事業部 保健師業務マネージャー
看護師として急性期精神病院で5年間勤務したのち、2020年エムステージ入社。産業保健師の業務委託事業立ち上げに携わり、現在は複数の企業で保健師として実務をおこなう。
労働と精神衛生についての啓蒙活動、寄稿などもおこなっている。
取得資格:保健師、看護師、養護教諭一種、第一種衛生管理者等
株式会社エムステージ『産業保健トータルサポート』
https://sangyohokensupport.jp/
取材/文 石田あかね
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