漢方薬を「空腹時に飲む」のはなぜ? 現役医師がその理由を解説
漢方薬は、病院で処方されたり、薬局やドラッグストアで購入可能なお薬だ。
我々の生活に身近な薬だが、食前や食間の空腹時に飲むよう言われることが多いだろう。
食前は食事の1時間から30分前、食間は食事の2時間後のことだ。
今回は、漢方薬を空腹時に飲む理由を解説する。
中国で生まれ日本独自に発展した医学
はじめに、漢方薬について簡単に説明する。
漢方薬とは、漢方医学に基づいて処方される薬のことである。
漢方医学は、中国から伝わった医学をもとに、日本で独自に発展した医学のことだ。
漢方薬は空腹時に飲むのが良いとされているのだが、なぜだろうか。
今回はその理由について、また飲み忘れた場合について解説する。
副作用を避ける
漢方薬には、数種類の生薬が含まれている。
生薬とは、植物や動物、鉱物のなかで薬として効果を発揮する部分を加工したものだ。
意外に思えるかもしれないが、漢方薬にはいまだに解明されていないことも多い。
そのため、相互作用が予測できない場合もある。
未知の相互作用を回避するために、他のお薬の服用時間と出来るだけ被らずに、食事の影響も受けにくい空腹時がおすすめだ。
また、生薬には、副作用が心配される成分が含まれるものもある。
これらの成分は、胃の中がアルカリ性に傾く食後の方が、吸収されやすいと言われている。
食後の服用で、効果が強く出過ぎることを回避するために、空腹時の服用が安全だと言われている。
腸内細菌の働きで効果を発揮
漢方薬を構成している生薬の成分は、「配糖体」という成分が含まれているものが多い。
配糖体とは、糖がくっついている物質のことで、水に溶けやすい特徴がある。
そのため、水に溶けやすい環境である空腹時の方が、腸管まで届きやすい。
腸管に届いた配糖体は、腸内細菌の働きで薬の効果を発揮する形に変わるため、効果を得られやすいと言われている。
飲み忘れた場合は食後に飲んでも問題ない
以上のことから、漢方薬は空腹時に飲むことが良いとされている。
しかし、明確な科学的根拠はないため、治療効果が大きく変わるほどの差はないとも考えられている。
指定された服用時間を守ることをおすすめするが、漢方薬を空腹時に飲み忘れた場合は、食後でも飲んだほうがメリットが大きい。
執筆者:あやたい
医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。
日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。
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