テニス業界が直面する経営課題 DXとデータ活用に見える可能性

国内で長く親しまれてきたテニスだが、競技としての人気と、事業としての持続性は必ずしも一致しない。テニススクールをはじめとする関連事業では、少子化やライフスタイルの変化、人材確保、施設運営コストなど、複数の課題が重なっている。

こうしたなか、現場の経験や勘だけに頼らず、データやデジタル技術を経営に取り入れようとする動きも出てきた。テニス事業に特化したコンサルティングを手掛けるテニビズ株式会社の代表・満岡英生氏に、業界が抱える課題と今後の可能性について聞いた。

「テニス」と「テニスビジネス」は何が違うのか

テニススクールなどの現場では、コーチの経験や指導力、競技への熱意が重要な役割を果たしてきた。一方、事業として継続するためには、集客や収益管理、人材配置、顧客データの分析といった経営面の視点も欠かせない。

満岡氏は、テニスに関わる事業者が競技の普及や技術指導だけでなく、一つの事業体として収益構造や組織運営を捉える必要があると話す。

同氏自身も学生時代にテニスに取り組み、その後は企業で新規事業や経営企画に携わってきた。スポーツで培われるチームワークや自主性、粘り強さといった要素は企業活動にも通じる一方、スポーツ事業を継続させるには、それとは別に経営の仕組みが必要だと感じたという。現場の熱意を損なわず、いかに持続可能な事業モデルに結び付けるか。これはテニス業界に限らず、地域スポーツやスクールビジネス全般に共通する課題ともいえる。

属人的な運営から脱却できるか

テニビズは2023年に設立され、テニススクールの運営支援や人材育成、市場分析などを手掛けている。

満岡氏は1995年にシャープへ入社し、戦略企画や新規事業企画などを経験。その後、GODAIグループで経営企画やスポーツ事業に携わったほか、日本テニス協会でも活動してきた。

こうした経験を背景に、現在はスクール運営を個人の経験や勘だけに依存せず、組織として判断できる仕組みに変えることを重視しているという。

たとえば、会員数や継続率、時間帯別の稼働状況などを分析すれば、どのクラスに需要があり、どこに改善余地があるのかを把握しやすくなる。ただし、データを集めるだけで経営が改善するわけではない。数字をどのように解釈し、実際の運営に反映させるかまで含めた体制づくりが必要になる。

DXやAIはテニススクール経営を変えるのか

近年、スポーツ業界でも予約管理や会員管理、マーケティングなどでデジタル化が進んでいる。テニススクールも例外ではない。

満岡氏は、ITやAIを活用しながら、小さな改善を繰り返す運営を重視していると話す。計画を一度決めて終わるのではなく、データを確認しながら施策を修正していく考え方だ。

例えば、会員データから退会が増えている層を把握したり、クラスごとの稼働率を分析したりすることで、料金体系やレッスン構成、集客方法を見直す材料になる。AIについても、問い合わせ対応や資料作成、マーケティング業務など、運営の一部を効率化する用途が考えられる。一方で、小規模なスクールではシステム導入にかけられる予算や人材が限られる。新しいツールを導入しても、現場で使われなければ意味がない。DXを進めるうえでは、費用対効果と現場への定着が大きな壁となる。

ピックルボールや健康市場にも広がる可能性

テニビズでは2026年、ピックルボール関連の人材育成支援や、テニス系YouTubeチャンネルのマーケティング支援、健康寿命をテーマにした新規事業などにも取り組んでいるという。背景には、テニス単体だけで市場を捉えるのではなく、ラケットスポーツや健康、動画コンテンツなど周辺領域へ接点を広げようとする考えがある。

特にスポーツスクールは、子どもの習い事だけでなく、中高年層の健康維持やコミュニティ形成の場としての役割も期待されている。今後は、競技人口だけでなく「スポーツを継続する人」をどのように増やすかも重要になりそうだ。ただし、新規事業を増やすだけで収益が安定するわけではない。それぞれの事業に継続的な需要があるのか、既存事業との相乗効果を生み出せるのかを見極める必要がある。

テニス業界は、少子化や余暇の多様化など、これまでとは異なる市場環境に直面している。競技への思いや現場の経験を大切にしつつ、それを支える経営基盤をどう整えるか。

データやDXはそのための手段の一つだが、最終的に問われるのは、導入した技術をどこまで実際の経営改善につなげられるかだ。テニスを「競技」としてだけでなく、「持続可能な事業」として成立させられるか。今後の各事業者の取り組みが注目される。

【取材協力】
テニビズ株式会社
代表取締役社長 満岡英生
https://www.tenibiz.com

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