
「人生100年×生成AI」時代の人材戦略とは? 第一生命CISOが明かす人材育成の成功のカギ
第一生命ホールディングス(Daiichi Life Group)は、保険業界におけるイノベーションと変革のための国内最大級のカンファレンスである「ITC Japan」にて、2月25日(水)、26日(木)に特別ワークショップを実施した。

第一生命グループの役員・シニアリーダー層が登壇したほか、Sakana AIの共同創業者であるLlion Jones氏はじめ、さまざまなゲストスピーカーを招いたイベントとなった。
保険業の変革がグローバルに加速する中、第一生命グループは、テクノロジーを差別化の重要な要素と位置づけ、事業変革とイノベーションを推進している。
IT・デジタル戦略においては、4つの領域(CX & Digital Trust、New Business Models、 Investment Value、Talent & Organization)の取り組みに注力することで競合との差別化を図るとともに、卓越した顧客体験価値を提供し、持続的な成長の原動力とすることを目指している。
今回、同社は保険業界の変革をリードするため、ITC JapanのPresenting Sponsorとして参画。デジタル戦略を軸に、業界課題を解決する知見を共有する場として、ワークショップを実施した。

25日には、Dr. Figen Ulgen(第一生命保険、第一生命ホールディングス・執行役員 Group Chief Data and AI Officer)が「人生100年時代 × 生成AI:新しい働き方」をテーマに基調講演を行った。

Dr. Figenは、「人生100年時代」と生成AIという二つの大きな潮流が交差することで、働き方と生き方そのものが再定義されつつあると語った。長寿化が進み、少子化が深刻化する日本は、世界有数の超高齢社会である一方、その状況を悲観ではなく機会として捉える視点が重要だという。すでに65歳以上の就業率は高水準にあり、高齢者は小売や福祉分野を中心に活躍しているが、AIの活用によってその可能性はさらに広がると指摘した。

特に生成AIは、知識の蓄積や継承をより自然な形で支え、世代間ギャップを埋める力を持つ。これまではベテランの経験や勘を文章やマニュアルに落とし込んでも、判断の背景や細かなニュアンスまで十分に伝えるのは難しかった。しかしAIを活用すれば、日々の業務データややり取りの中から重要な知見を整理し、必要な人がすぐに活用できる形で共有できる。AIによって蓄積されていた知恵を、組織全体で循環させることが可能になるという。
そのうえで成功の鍵は、「責任あるイノベーション」に自動化と人間同士のつながりを掛け合わせることにあると強調。使いやすさの向上や精度への信頼構築、セキュリティとプライバシーの確保、既存システムとの連携といった技術面の課題に加え、企業や行政によるガイドライン整備、そして高齢層を含む全社員へのリスキリング支援が不可欠だと述べた。

さらに、若手とベテランを組み合わせた協働モデルを制度化し、AIをチームの一員としてマネジメントする力を育てる必要性を提起。高齢層が第一線を退いた後も「Wisdom in the Loop(知恵の循環)」として関わり続ける仕組みを構築することで、世代を超えた価値創出が可能になると締めくくった。

「人材の再設計(AI×グローバル×VUCA)」をテーマとしたパネルディスカッションでは、Llion Jones氏(Sakana AI株式会社 共同創業者 兼 CTO)が、Sakana AI創業時のエピソードを披露した。日本で会社を立ち上げると投資家に伝えた際、「AI人材はシリコンバレーに集まっているのではないか」「日本で本当に優秀な人材を確保できるのか」と懸念の声が上がったという。

しかしJones氏は「私たちは日本でやると決めていた。投資するなら、日本に資金を送ってほしい」と方針を曲げなかった。その結果、これまで日本に投資実績のなかった米国の大手投資家も資金を拠出。海外マネーが日本に流れ込む新たな道を開いた形だ。「人材がいないという見方は誤りだった。実際には優秀な研究者は日本にいる」と語り、日本発AI企業の可能性に自信を示した。

Fred Stute氏(第一生命ホールディングス・グループ CISO)は、自身のキャリアを振り返りながら、変化を前提とした働き方の重要性を語った。CISOに就任したのは1年ほど前のことで、「セキュリティを主軸とする役職に本格的に就いたのは今回が初めてだ」と明かす。それ以前は開発やエンタープライズアーキテクチャなど複数の職種を経験してきた。
「役割を行き来するのは混乱もあるが、視野を広げてくれる」と述べ、一直線ではないキャリアの価値を強調した。日本企業に多いローテーション制度についても、「幅広い経験は得られるが、ゼネラリスト(オールラウンド型の人材)になりがちだ」と指摘。そのうえで、「自分が本当にやりたいことを見極め、それを後押しする組織文化が重要だ」と語り、社内での再教育や役割転換を支える環境づくりの必要性を伝えた。

生成AIの活用と人材育成、そして日本発スタートアップの挑戦まで、多角的な議論が交わされた今回のワークショップ。保険業界の変革は、技術導入と同時に、人材への投資と組織づくりをどう進めるかにかかっていることが共有された。
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