医師はなぜ「余命」を予測できるの? 現役医師がその判断ポイントを解説

病院などで親や親しい人が亡くなる前に、そろそろ亡くなりそうなので病院に来てください、と言われた経験はないだろうか。

また、「余命はこれぐらいです」と伝えられたことはないだろうか。

このような時、なぜ医師や看護師などはそのタイミングがわかるのだろうと、疑問に思うこともあるはず。

今回は、医師が死期を把握する方法について解説する。

バイタルサインに注目

医師を含む医療従事者は、バイタルサインと呼ばれる生命活動に非常に重要な項目を、自然と意識している。

バイタルサインには、元気そうかなどを含む意識状態、血圧、脈拍、呼吸パターンを含む呼吸状態などがある。

人が命を落とす時には、これらのバイタルサインが少しずつ悪化していく。

どの項目が最初に崩れていくかなどの、悪化していく順番については個人差が大きい。

そのため、総合的に評価している。

これには、ある程度の経験が必要である。

慣れてこれば、1ヶ月以内に亡くなりそう、数週間ぐらいなのか、数日なのか、数時間なのかが分かるようになる。

もちろん、100%の確証はないが、8〜9割程度は実際当たっているのだ。

データを参照

特にがんの患者の場合であれば、予後が分かりやすい。

ほとんどのがんには、ステージという重症度がある。

このステージによって、適切な治療を行った場合、5年後にどれぐらいの患者が命を落としてしまうのかのデータが出ている。

ちなみに、5年という期間にも理由がある。

多くの種類のがんで治ったと考えられても、再発してくるのが5年以内であることから、よく用いられているのだ。

そして、まったく治療を行わなかった場合、どの程度の予後なのかということに関してもデータがある。

医師はこれらのデータを参考にしながら、患者個人の状態をふまえて予後を予想している。

経験により予後を予想

バイタルサインが崩れておらず、がん患者などの予後に関するデータが出ていない場合、いつまで生きられるのかを予想するのは難しい。

しかし、経験豊富な医師であれば、そのような場合でも驚くほど言い当てる場合もある。

バイタルサインは数字、予後のデータも数字である。

数字は分かりやすい指標であるため使われがちだが、患者は数字でできているわけではない。

生身の人間の将来を予測するには、結局は「経験が一番大切」なのだ。

執筆者:あやたい

医療制度や医療職・医療現場が抱えるさまざまな問題について考える医師。

日々変わっていく医療現場から生の声や、日常に役立つ医療知識を発信したいという思いで執筆。

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