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エステ業界の「多店舗展開」はなぜ失敗するのか? 資本力よりも大切な「人を育てる経営」の本質

みなさん、こんにちは。日本エステティックサロン経営学院 学院長の草野です。 私たちは日々「美」と「癒し」を届けながら、同時に「経営」という重要な使命を担っています。

近年、エステ業界では大手事業者の撤退や倒産が相次ぎました。なぜ、他の小売業や飲食業のようにフランチャイズ(FC)での全国展開が難しいのでしょうか。今回は、経産省が定義するエステの社会的役割と、成功する経営の「両輪」についてお話しします。

「人」と「時間」が壁になる、フランチャイズの難しさ

コンビニや飲食店と異なり、エステティックは徹底した「人の手」と「心」によるサービスです。

優れたエステティシャンを育てるには、一朝一夕にはいかない時間と経験が必要です。しかし、店舗拡大のスピードに育成が追いつかないのが業界の実態です。数カ月の研修を経たからといって、すぐに現場で安定した売上を立てられるほど、この仕事は単純ではありません。

「人を育てることを後回しにした経営」は、どんなに資本力があってもブランドの信頼を失い、崩壊します。かつての大型脱毛サロンの破綻も、急激な拡大に対して「人」が追いつかなかったことが大きな要因でした。

2. エステティックは「サービス業」ではなく「ヘルスケア産業」

実は経済産業省において、エステティックは単なるサービス業ではなく、「ヘルスケア産業」として位置づけられています。

つまり、外見を整えるだけでなく、心身の健康やストレス軽減、自己肯定感の向上に寄与する社会的な役割を担っているのです。経営者は、自分たちが社会の一員として「健やかな心身という土台の上に“美”を提供している」という高い意識を持つ必要があります。

そのために不可欠なのが、「技術力」と「組織運営力」の両輪です。 仕組みづくりに悩む方は、国が関与して策定された「エステティックサロン認証基準」や、厚労省の「職業能力評価基準」をぜひ参照してください。これらは、努力が正しく報われる経営への「公式なガイドライン」なのです。

3. 開業の3タイプ 技術だけでは超えられない「落とし穴」

サロン経営のスタートには大きく3つの形がありますが、それぞれに特有の課題があります。

開業タイプ:① エステティシャン独立型
強み:技術力・お客様からの信頼
つまずきやすい点:経営・財務の知識不足
成功のカギ:経営の仕組み化・学びの継続

開業タイプ:② 大手勤務→独立型
強み:マネジメント知識
つまずきやすい点:人材の採用・定着
成功のカギ:技術力と顧客満足度のバランス

開業タイプ:③ 異業種からの参入型
強み:経営・財務の強さ
つまずきやすい点:技術・人材育成の理解不足
成功のカギ:業界理解と現場との連携

特に異業種参入の場合、「資金があれば成功できる」と考えがちですが、エステは究極の「人財産業」です。売上の数字以上に、現場の人間関係や育成にどれだけ投資できるかが分かれ道となります。

知識の「内製化」が業界の未来を拓く

SNSやAIで情報が溢れる今、知ったつもりになる「情報のつまみ食い」が一番の危険です。 経営者自身が、業界の歴史や国の指針を「自分の言葉で語れるまで」深く落とし込むこと。この「知識の内製化」こそが、スタッフを守り、サロンの未来を拓く力になります。

また、学んだことを正しく発信することも重要です。個々のサロンが質の高い情報を発信し続けることは、業界全体のイメージを向上させ、次世代の道しるべとなります。

結論:エステの本質は「人を育てる経営」にあり
エステティックの本質とは、人の手だからこそ生まれる繊細な価値を、持続可能な形で育てていく「仕組み」そのものです。

技術力と運営力。どちらか一方が欠けても、長く走り続けることはできません。 みなさんのサロンが、スタッフを育て、お客様の心を満たす場所であり続けるために。そして、この仕事が社会に誇れる産業として輝くために。

今日も、正しい努力を積み重ねていきましょう。

【取材・執筆協力】
草野 由美子(くさの・ゆみこ)
JESMA 日本エステティックサロン経営学院 学院長。 専門学校講師、サロン経営を経て、現在は医療・美容系サロンの経営コンサルタントとして活動。小規模サロンのオーナー教育に特化した「JESMA」を開校し、健全な業界発展のための教育活動に尽力している。 公式HP(https://youplando.com/)

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