
高齢化で増える目の疾患、「地域眼科」に求められる早期発見と継続医療の役割
日本では高齢化の進行に伴い、白内障や緑内障、加齢黄斑変性といった加齢性眼疾患への対応が重要な課題となっている。日本眼科医会も、視機能の衰えを早期に発見・対処する「アイフレイル」の啓発を進めており、眼科医療の役割は治療だけでなく予防や早期発見へと広がっている。
こうしたなか横浜市保土ケ谷区の梅の木眼科クリニックでは、診療から手術、術後フォローまでを地域で完結できる体制づくりを進めている。地域眼科は今後どのような役割を担うのか。院長の熊谷悠太氏に話を聞いた。
なぜ「かかりつけ眼科」が重要になっているのか
高齢化が進むなか、眼科領域では白内障や緑内障など慢性的な管理が必要な疾患が増加している。特に緑内障は自覚症状が少ないまま進行することが知られており、日本緑内障学会による「多治見スタディ」では、40歳以上の約20人に1人が緑内障を有すると報告されている一方、その多くが未診断だったことも明らかになっている。また、厚生労働省の患者調査でも白内障や緑内障は高齢者に多い眼疾患として位置づけられており、定期的な眼科受診による早期発見の重要性が指摘されている。
梅の木眼科クリニック院長の熊谷悠太氏は、大学病院や地域中核病院での勤務を経て2019年に同院を開院した。同氏によると、勤務医時代には「手術を担当した医師に継続して診てもらいたい」という患者の声を聞く機会が少なくなかったという。そうした経験から同院では、診察から手術、術後フォローまで一貫して対応できる体制づくりを進めている。
ただし、高齢患者の増加に対して眼科医や医療スタッフの確保は容易ではない。地域医療全体でみれば、継続的な受診体制をどのように維持するかが課題となっている。

診断から術後フォローまで――地域完結型医療の試み
同院では白内障手術をはじめ、小児眼科や緑内障診療など幅広い診療に対応している。
熊谷氏によると、院内には各種検査機器や手術設備を整備し、国家資格を持つ視能訓練士も配置しているという。視野検査や小児視機能検査など専門性が求められる診療にも対応できる体制を構築している。


また近年は白内障手術で使用する眼内レンズの選択肢も増えている。同氏は「どのレンズが適しているかは患者ごとに異なる」と説明する。
そのため同院では手術件数よりも、患者が十分に理解し納得した上で治療方針を選択することを重視しているという。
もっとも、どの治療法にも適応判断が必要であり、全ての患者に同じ選択肢が当てはまるわけではない。医療技術の進歩と同時に、適切な説明と意思決定支援が求められている。
受診控えが生むリスク――「アイフレイル」の現在地
近年、眼科領域では「アイフレイル」という考え方が広がっている。これは加齢に伴う視機能の低下を早期に発見し、必要な対応につなげる取り組みである。
日本眼科医会によると、アイフレイルは加齢に伴う目の機能低下の初期段階を指し、放置することで視機能障害へ進行する可能性があるとされている。また、緑内障や加齢黄斑変性などは初期段階で自覚症状に乏しいケースも多く、日本眼科医会や日本眼科学会は定期的な眼科検診の重要性を呼びかけている。
熊谷氏も「視力低下や緑内障の疑いを指摘されても受診を後回しにする人は少なくない」と話す。
眼疾患の中には進行してから症状に気付くものもあり、早期発見によって治療の選択肢が広がるケースもあるとされる。
一方で、啓発活動だけで受診率が向上するわけではない。高齢者の通院負担や医療機関へのアクセスなど、地域医療が抱える構造的課題も存在する。
地域眼科は「相談窓口」になれるか
熊谷氏は診療で重視していることについて、「患者との対話である」と話す。
検査結果だけではなく、患者が何に不安を感じているのかを把握し、現在の状態や今後の見通しをできるだけ分かりやすく説明することを心掛けているという。特に眼科では、手術を勧められた患者や慢性疾患と向き合う患者が不安を抱える場面も少なくない。そのため同院では、治療を受けるかどうか迷っている患者に対しても相談の機会を設けている。
ただし、高齢化による患者数の増加が続くなか、一人ひとりに十分な説明時間を確保し続けられるかは地域医療全体の課題でもある。患者との対話を重視する医療が地域に根付くかどうかは、人材確保や診療体制の整備も含めて今後の論点となりそうだ。

【取材協力】
梅の木眼科クリニック
院長 熊谷悠太氏
https://www.nishiyaumenokieye.com
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