建設業界の3Kが変わる!3K(きつい、汚い、危険)から4Kへ
建設業の労働環境といえば3K(きつい、汚い、危険)。
いまだ週休2日制すら浸透していないなど、これでは若手人材の確保が進まず万年人材不足と言われ続けるのは仕方のないところ。
ところが2024年4月から「働き方改革関連法」による時間外労働の上限規制などが全業種に適用されることで、いよいよ建設業界も3K脱却に本腰を入れざるを得ません。
働き方改革とは「就労者が個々の都合に応じて柔軟に働けるように」と政府が2016年から検討を始め、2018年に「働き方改革法案」として法制化されたものです。
時間外労働の上限規制の導入ほか就労者の健康や権利を保護する内容であるとともに、人手不足の解消や生産性および出生率の向上なども狙いとし、雇用する企業はもとより社会全体の未来も考慮したものです。
働き方改革こそ、「きつい、汚い、危険」の3K打開策と意気込む政府とは裏腹に、実態はどのようなものなのでしょうか?
このほど、建設業界の現状や課題の把握を目的に実施した、「建設DXに関するアンケート調査」の結果が発表されました。
調査を行ったのは会社創立時より「3Kと言われる職種こそ、社会の基盤。3K(きつい、汚い、危険)を4K(快適、効率的、かっこいい、稼げる)へ変えたい」と熱く語り続ける渡邊善太郎氏が代表取締役社長を務めるスカイマティクス社(東京都中央区)です。
同社の事業内容は、産業用のリモートセンシングサービスの企画・開発・販売。主要取引先である建設・土木技術職従事者にDX化や生産性効率化に関して2022年11月21日~28日にアンケートを行い、1,039人から回答を得ました。
さて、3K改革は成就しそうでしょうか?
働き方改革適用に着手している企業は4割、特に小規模企業では2割に満たない
まず、建設業の「働き方改革」への取り組みがどの程度まで進んでいるのかについて見ていきます。
「あなたの勤務先は、働き方改革関連法の適用に向けた働き方改革・残業削減の取り組みに着手しているか?」という質問に対して、「着手している」は全体では41.7%でした。
この結果を企業規模別に見ると、特に小規模企業は大規模企業の1/3以下しか取り組めていません。
さらに「建設ICTツール導入状況」に関するアンケート結果を合わせて見ると、小規模企業の対応の遅れは、建設ICTツールの導入が進んでいないことが影響しているように感じられます。
コスト面や使いこなせる人材の有無等、ICTツール導入が進まない理由はいろいろあるのでしょうが、「建設ICTツール導入の成果」に関するアンケート結果を見ると、導入済みの企業からは概ね「成果を感じられる」との答えが返ってきていますので使わないのはもったいないような気がします。
つまりICTツールには、使えばそれなりに生産性を高め、働き方改革・残業削減を進めるパワーを備えていることを裏付けるデータだと言えるでしょう。
こうなると、小規模企業が従来の3K(きつい、汚い、危険)から脱却できない一因にICTツール導入の遅れが無関係とは、ますます考えられなくなってきます。
ICTツールの導入を阻むものは何か?
「建設ICTツールを導入するにあたり、ネックとなる要素は何か?」という質問に対して、最も多く挙げられたのは「初期費用」55.5%、2番目は「ランニングコスト」、3番目は「導入しても社員が使いこなせるか分からない」35.4%、4番目は「社内で導入を進めるICTに詳しい人材の不足」33.9%でした。
導入が進んでいない小規模企業は、確かに割ける予算が限られてしまいます。
ICTツールに関する情報収集もままならなければ、コスト面や使いこなすノウハウに不安が残り、なかなかアクションを起こせないのは想像がつきます。
ただでさえ人手不足なのですから、小規模企業では情報システム部やIT担当者などのICTツールの導入を支援する体制は簡単には整えられません。
つまり、
1)ICTツール導入にメリットは感じられても、情報収集の余裕がない。
2)低コストでないと導入できない。
3)運用が簡単でなければならない(ICTツール用の特別な人材を配備できない)。
といったような要素が、小規模企業のICT導入を阻んでいると調査結果から汲み取れます。
導入済みのICTツールとして最も多かったのは、なんとドローン
これまで見た調査結果では、小規模企業の3K脱出のカギはICTツールの導入に踏み出してみるのは一興だと考えて間違いなさそうです。
建設業といえば、CADを筆頭に設計や測量でIT武装自体は他業種よりも進んでいる印象があります。実態として、どのようなツールをすでに導入しているのでしょうか?
今回の調査では、「最も生産性向上に貢献した建設ICTツールは何か?」という質問も用意されています。
回答で1位に挙げられたものは、「ドローン」(23.2%)でした。
「使ってよかった」と思われているのは、建設業では基本中の基本とも言える3DCADではなく、ドローンだという事実にかなり驚かされました。
ドローンって、基本は何かを運ぶときに便利なものでしょ?
そうでなければ遠隔操作で広範囲な写真を撮影するとか……。
建設業では、人間が足を踏み入れられないような場の地形データを入手するために、これまでは人間の力だけを頼りに何日もかけていたそうですが、ドローンの場合はそれを数時間でこなしてくれるのだとか。
ドローンの利用方法は各社各様のようですが、この調査の過程で、特に立体データを撮影から数値化まで、ドローンの働きによって大幅に労働時間を削減できたという声が数多くあがったと聞きます。
今回の調査を行ったスカイマティクス社でも、ドローンと同社の測量計算ソフトの組み合わせで、従来最大9人日かかっていた度量計算の工数が1人で30分までへと削減できたという実績ほか、数多くの事例が報告されています。
このような実績を踏まえて、「今後導入したい・してほしい建設ICTツールは何か?」という質問に対して、1位に挙げられたのはやはり「ドローン」(26.0%)でした。
なお、2位は「3D CAD/三次元データ作成、点群処理ソフト」(20.9%)でした。この2つを組み合わせて、ドローンで取得した地形データを3D CAD等で活用することで、生産性を向上させたケースも多いと想定されます。
ドローンといえば物販というのは、もう昔の話なのかもしれません。
今後ますます建設・土木業界で活躍が期待できそうです。
すでにドローンは建設業界での利用が珍しくなくなっていること、つまり情報も入手しやすく、比較的安価であり、初心者でも意外に簡単に使える等、導入のハードルはそれほど高くないと考えられます。
ICTツール未着手の企業の方々も、まずはドローンを軸にしたシステムの導入を検討されるとよいのではないでしょうか。
ドローンで労働時間が大幅に削減され、面倒な仕事を丸投げできるなら、3Kのきつい、汚い、危険を拭い去り、なにか「快適」「効率的」「かっこいい」「稼げる」の4Kへと方向転換してくれそうな期待が持てそうな気分になってきます。
この調査結果を見て、環境工学に詳しく働き方改革の研究にも熱心な馬奈木俊介九州大学大学院工学研究院教授は、
「建設ICTツールの中でもドローンは、導入による生産性向上の寄与度が高く、未導入の企業でも導入意向が最も高いツールであり、ドローンによる建設業の生産性向上への期待が高まっていることが示唆されています。
ドローンはそれほど高額ではありません。また、ドローンで取得した地形データを利用する上で、様々なソフトウェアがありますが、中には安価で、誰もが使いやすいツールもあります。小規模企業こそ、生産性向上や働き方改革を推進するために、まずはドローンの導入を検討すべきです。ドローンの普及によって、建設業全体の生産性が向上することが期待できます」というコメントを寄せています。
建設現場でドローンをはじめICTツールを使いこなす人を想像すると、「先端的でかっこいい」というイメージがあります。ドローンの普及は、建設業のイメージを変える第一歩にもなるかもしれません。
【調査実施会社概要】
会社名:株式会社スカイマティクス
URL:https://skymatix.co.jp/company/
本社所在地:東京都中央区日本橋本石町4-2-16 Daiwa日本橋本石町ビル6階
事業内容:産業用リモートセンシングサービスの企画・開発・販売
代表者:代表取締役社長 渡邉 善太郎
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